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詩【 夏と秋のバトン 】




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詩【 夏と秋のバトン 】



微かな秋の匂ひが
雲の上で まどろみながら
吸い込まれていくようでもあり
行き交う夕景と音色が
つかまえられずに手放したようで
人の中にある時計は動きもせずに


それらを素知らぬふりのままで
涼やかに鳴く君らは


足繁く通うはずの道が
通り過ぎる草の匂ひに
少しずつ覆われていることを
遠巻きに見つめている


街中あたりの街灯は
艶やかな明かりが笑い合うけれど
川面に映る草花の影が揺れ動き
今宵の匂ひを
すでに感じとっているだろう


いちばん最初に鳴き始めたのは
君らの中の 誰だったのだろう


通り過ぎた雨が月夜に消えた時
足早にいく 風の速さが
追いかけてくるようで
日に日に生まれては鳴く君らは


川面の奥の
水流からは次の時が来たと
告げられていたのかい


遠くの山に映る花の匂ひは
風に運ばれて
すぐに訪れることだろう


夏の映し絵が早々と過ぎて
冷たいほどの風が花びらを
覆い尽くし始めていることを


離れた場所であろうとも
ともに手をたずさえながら
空の下で生きていることを
君らに伝えては繋ぐために


その繋がれた見えない糸が
風の中に存在することを
君らは知っているのだと


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by kazeumi-jun | 2017-08-10 01:34 |