詩【 隔てる夜の中で 】【 鈴虫 】




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詩【 隔てる夜の中で 】
【 鈴虫 】



透明な壁が隔たるかのように
あちら側では鈴虫の声が聞こえて
涼やかな夜を奏でるというけれど


同じ夜の 同じ場所で
同じ一つの場所で
こちら側と あちら側が
隔てて分かれるかのように
鳴き声は聞こえる


私にはコオロギの声だけが耳に届く
小さな耳は通り道が狭くて
音色は届かず
小さな頃から変わらずあって


貴方はそれらを知りながらも
大きな声で鳴り響く
コオロギだけしか聞こえない
それらの私を忘れたかのように

鈴虫の音色の言葉を奏でては
もう一人の透明な人に向かって
うたを呟くけれども


誰に言っているのだろう
貴方は透明な向こう側の誰かに
囁いている


寂しげな鳴き声の秋の虫が
微かに草むらで鳴くけれども
寂しげであるのは
壁際の私なのだろう


私には聞こえない鈴虫の音色が
ひっそりと放つ行方を
誰に向かって俳句を奏でたのか
貴方は誰に向かって


耳の通り道が狭い私には
ほとんど聞こえない鈴虫の声はなく

微かに聞こえるコオロギだけが
ひっそり私の耳には届くだけと
貴方は知りながら


鈴虫の繊細な声は小さすぎて
私の耳までは聞こえない

それらを貴方は知っていて
艶やかに誰ぞに向かい囁く


貴方が奏でた言葉の俳句が
誰かの ひとりだけに向かっていく
文字となって
私には聞こえない鈴虫の音色


寂しげだったのは秋の虫ではなく
私のほうだったと
夜の中で再び秋の鳴き声を聞く


透明な壁に隔たれたままで
夜の中で秋は近く寂しげに


私には聞こえない鈴虫の声が鳴くと
貴方は誰かに囁くけれども

透明な壁に隔たれたままで
貴方の心も透明な壁に隔たれて

私の心は夜の壁際で独り座り込む


夜の中で秋は近く寂しげに
私の心は夜の壁際で独り座り込む


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by kazeumi-jun | 2017-08-29 03:50 | | Trackback