詩【 山裾の声 】




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詩【 山裾の声 】



まだ見ぬ春風がベールを脱いで
冬空に眠る、春の野に来たらば
そこかしこで小さき花びらは
光の声をかけてくるだろう


遠き山裾の野は
いとも声を上げるかのよふな
しぐさをしながら
風通しの良い大地に向かい
小さな新芽の草にさへ
人の世にはない声をかけるだろう


聞こえぬ声が辺り一面にいきかうとき
山裾の風は微かな笑みすらも
人の世には見せぬように
君らに注いでいくことだろう


川沿いの道を歩くとき
我がつたない両足すらも
小さき草花の芽を踏むことなく
視線だけを向けるだろう


それらの澄んだ息づかいを
この動きのない壁のよふな右手に
君らの息づかいを
吹き付けてくれるだろうか?

我の体内に眠る、血の巡りが悪く
動きを止めた右手は
やっと春が来たと嬉しげに
薄紅色の肌色に変わり
それを君らに見せることだろうから


春が来たらば
この指先に注がれた
君らの息づかいをもらい
この壁のよふな右手から
君らに挨拶状を送らせよう


あゝ 春の野よ
愛おしくも、我が視線の先で
秘めやかな息づかいを見せる
君らの瞬間を
この記憶の中に、全て残すことなく
受け止めようと思ふ


春が来たらば、山裾の野は
我が身の傍らで
なんといふことだろうか
めぐりめぐる季節時計の声を


■【 作成日 】■
【 2018年2月10日 】



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by kazeumi-jun | 2018-02-15 15:18 | | Trackback