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詩【 小さき早春絵図に微笑みを 】



芽さえ小さき早春の
菜の花は風を呼べども
遠き山里からは返答なき

片隅の小さな街では
かすかな匂ひはすれども
バラバラに訪れしものが
小さき声を
あたり一面に散らばせて
風は冷たさ伴う時計の中間あたり

人のそれらは早出の春が訪れども
時計の針はゆるりと動きつつ
人は艶やかさにまみれて

素知らぬ顔で
足踏みする草花ぞ

かすかに訪れし
早春の風に吹かれつ
光を放つ花びらよ

君らの時計の秒針は
人のそれらとは
素知らぬ顔で風に揺れし

あゝ 小さき野スミレ
早々と咲きし君らは
人の世のそれらとは素知らぬ顔で
声すら出さぬなれども
いつも繊細な風に吹かれて
今年もまた

早春の風に吹かれし
春一番の野スミレの一本に
かすかな微笑みを送ろう

小さき早春絵図に微笑みを

どんな言葉をかけても
君らの澄んだ息にはかなうまいよ

願わくば
足元に咲きし野スミレ一本が
踏み潰されぬよう
足踏みされぬよう
人の世のそれらの中で

小さき早春絵図を

早春の風に吹かれし
春一番の野スミレ一本に
かすかな微笑みを送ろう

小さき早春絵図に微笑みを











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by kazeumi-jun | 2017-02-28 05:29 | | Trackback




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詩【 鏡の中の二重構造 】



鏡の前には机がある
机の上には一輪挿しがある

それらを飾る一輪の花

その鏡を見れば
鏡の中には一輪挿しの花
それらを飾ってある姿が
映し出されている
ごく普通の鏡として

鏡の中を見やれば
何やら 鏡の中の中に
さらなる鏡はあり
一輪挿しの花があるではないか

ふと霧がもくもくと
湧き出るかのごとく
鏡を覆い隠してしまった

鏡の汚れをも慌てて拭き取る

だが ………

鏡の中から
ぼおっと映し出されてきた
別の場所にあるはずの一輪挿し

驚きを隠せない

鏡の中には
さらなる鏡があって
別な一輪挿しの花をも
そこにあるではないかと

不可思議な鏡の中から
さらなる鏡はあり

また新たな鏡は小さく
映し出されてきたのだ

まるで一輪挿しの花が
三回の鏡によって
枯れ果てていくかのように

だが
どうだろう

鏡の前の
机に飾ってあるはずの
一輪挿しの花は枯れてはおらず

まるで
枯れ果てたのは
鏡の中の
さらなる鏡の中の
一輪挿しの花だけなのだ

これはなんだというのか

鏡が壊れて映すことを
やめたのか?

いや ……… だが ………
枯れ果てていない
机の上の一輪挿しの花だけが
現在の光景だろうと

言葉巧みに
説き伏せながら

………… だがな

さて
どちらの光景が本当の
今ある現実なのか

そう
あやふやなのは
鏡の二重構造か

それとも見る意識の中の
心が変えてしまったのか

どちらが正しい光景だろう

きっと それを知るのは
隠された鏡だけかも ………

見る意識のほうの
背中を誰が知ることだろう

それらの真後ろに
さらなる鏡はあるのだと

鏡の二重構造は
見る意識が創り出した
哀しい光景だったのかもしれぬ

事実は隠されし
鏡の中の二重構造に











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by kazeumi-jun | 2017-02-26 07:00 | | Trackback




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詩【 粒子になり風になる 】



いつぞや
やっと川岸で見つけた
一本だけの四つ葉のクローバーは
願い事をかけたまま眠る

葉が朽ちた四つ葉は
風に消えそうな姿で
今なお本の中で眠る

狭い野原に咲いていた
それらを
もっと広い大地に返してやろう

眠りについたままの
一本だけの四つ葉のクローバー

やがて
広い大地の場所で
空を渡る風に吹かれ
粒子になり流れて
誰の目にもつかぬまま
風と一体化することだろう

粒子になり
風と一体化して
光の中で消えながら
それらの中で眠るがよい

戻るなかれ
風と同化した葉が
眠りにつくのならば

あの広い大地に返してやろう

風となって
何処までも流れていくがよい

私は広い大地の上で
一本の四つ葉のクローバーを
見送ろう

風は四つ葉のクローバーに
優しいかい

そう語りかけて
広い大地に返そう

もう願い事を叶うようにと
しなくてもいいんだよ

それすらも出来ぬまま
いつか葉が枯れ果てて
朽ちる寸前の四つ葉が
風になりたがっていることを
知っているから

ゆっくりと風と同化しておくれ

もう願い事を叶うようにと
しなくてもいいんだよ
叶わない事が疲れただろうね

本の中で
ひたすら朽ちていくのを
知りながら

広い大地に返そう
あの願い事をかけたままの
一本の四つ葉のクローバーを

今度は風になるだろう

大地に返すのならば
広い草原に風が吹き渡る場所で
川や海のない場所がいいだろう

水の流れに沈み込んで
ひたすら水面があるだけでは
あまりに切ないだろうから

何処までも流れていける
広い大地の上で風と同化できる
そんな中に返してやろう

朽ちて風と同化した四つ葉を

長い歳月にわたり
一つだけの願い事が叶うこともなく
朽ちた葉の粒子を

もしも
見送る私の姿が見えたなら
風となった葉の粒子を
舞い上がらせておくれ

風は四つ葉に優しいかい

私はそう語りかけることだろう

いつか
いつかの先で
私も粒子の風になり
朽ちた葉の粒子を追うことだろう

それらの姿を
いつか追いかけてゆくだろう
私の身も風となって

風は朽ちた葉の粒子に
優しいかい?

優しいのかい?

いつまでも語りかけることだろう
その姿を追って

その姿を探し続けて
語りかけることだろう

枯れ果てて朽ちて風と同化した
一本の四つ葉のクローバーよ

その風が
粒子になった四つ葉のクローバーに
優しいことを
ひたすら 私は願って











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by kazeumi-jun | 2017-02-23 17:15 | | Trackback




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詩【 二つの絵図を持つ人へ 】



どうしても
私に理解はできないのだ

私の心が理解できないのだ

君は告げる
それぞれ人には
二つに隔てた世界があって
それらの二つの世界では
別々に生きて持ち合わせるような
愛情すらも二つあると

しかし
私の生きる絵図には
それらがない
君のように

現実を生きる世界と
幻想を生きる世界とに
それぞれ愛情すらも分かれて
そうして生きる絵図は持たない

体内では二つに区別することなど
できないのだよ

この私にはね

この中に深くて広い愛情はあっても
愛情のありかは一つだけ
わけては考えられないのさ

もっと器用に生きる人であれば
理解しただろう

不器用すぎて
愛情のありかすらも
声の中で一つしか持たない

器用に生きることができていたら
体と心が分断されて
心が壊れていくことはなかっただろう

二つの世界との
兼ね合いをはかりながら
愛情を二つに隔て
そうした愛情のありかを
器用さに持ち合わせている
それらをできていたら

心が二つに分断して
潰れることすらありはしない

この世の中には
世界が二つあると
隔てた壁をそのままにして
生きることは
悪いことではないだろう

生きる上での狡さを持ち合わせて
分断された世界を器用に生きて
笑っていられたら
私は心が潰れることすらなかった

そう思うのさ

生きるときの狡さを持つのは
悪いことではない

けれども
己にはできなかった
不器用すぎて
生きるときの狡さを持てずにいた

だからこそ
いつまでたっても
分断された世界を器用に生きて
愛情のありかを二つ行ったり来たり
そうしながら生きることに
理解はできなかったのさ

私は深くて広い愛情を一つ
持ってはいるけれど
愛情のありかを二つは持てない

もしも
君のように
現実には愛情が一つ
幻想にも愛情が一つ
それらは体内の中で器用に
二つの愛情を育てることが
できていたら
君を笑って見ていたことだろう

生きるには
生きるときの狡さをも持ち合わせ
それが人の器用さとして
考えられていたら
きっと楽な生き方なんだろう

それは悪いことではない

だから
私には器用に生きることすら
できなかったのさ

これからも
ずっとこれからも
不器用な生き方しかできない

君の器用さを
持てない人間だと知るからこそ
言うのだ

分断された世界を器用に
行ったり来たりするほど
愛情のありかを二つ持てるほどの
器用さを持ち合わせてはいない

生き方が違うのさ

不器用な生き方しか持たない
それらは ずっとこれからも
ずっとこれからも

君はそうして
分断された二つの世界を
器用に行ったり来たりしながら
生きていくんだろう

己は己の生きる道があると
知るからこそ

知るからこそ

君よ
二つの絵図を持つ人へ

私の絵図はいつだって
一つのキャンパスの中で
描かれていくことを
告げるしかないのだと

私の愛情の海は一つだけ
それらは深くて広いけれども
分断された世界を生きる器用さは
持てはしないのだと

己の海の中には一つだけの
深海があり深くて広い

それらの海の中に入る人は
誰でも受け入れるけれども
分断された海を二つは持たない

私はそういう人間なのだ

不器用だと笑うならば
それでもいいだろう
それが己自身だからこそ
君に告げるしかないのだと

君とは生きる絵図の場所と
生きる道すら違うのだと
哀しくも告げる己を










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by kazeumi-jun | 2017-02-23 15:06 | | Trackback




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【 まだ浅い春の日に …… ③ 】



全てのものが浅い春の日に



雪解け水は
冷たさ含む風を写し込み
閉ざされたものが
流れ始めた水流の中で
拾い集めて

真冬の中から
その記憶すら
拾い集めてくれるだろう



誰もの記憶に残らず
まだ浅い春の日に



全てのものが
雪解け水の流るる中に
吸い取ってくれるだろう



さようなら は
簡単に



全てのものが浅い春の日に



誰もの記憶に残されぬよう
まだ浅い春の日の
冷たさ含む風は
雪解け水に
拾い集めてもらい

冷ややかな風と共に



きみは
いつもそうだった


多くの手をつかみ
全てのものが
きみの記憶を残すようにと

きみは私だけではだめなのだ


誰ぞの記憶の中にすら
救いを求めた

きみは私とはあわない

何故なら
きみは
いつだって
他の誰ぞの記憶の中にすら
残したいと思う人だからだ



それが私を深く傷つけている

それすら
きみは気がつかず


なぜ誰ぞの記憶の中にすら
残したいと思うのだ
多くの手に救いを求めて


誰ぞの記憶の中にすら
かすかな一点の記憶を残すように

それらの記憶が残されれば
きみは良かっただけなのだ
いつでも きみは



きみは いつだって
救いを求めるのは
私だけではない人だから

それが私を深く傷つけていると
きみは気がつかず
きみは知らない人だからだ



それが
私の心に
ざっくりと深い傷を残して
この体すらも
ボロボロにしたのだと
きみは知らない
きみは気がつかない



きみは いつだって
救いを求める誰ぞの記憶の中に
一点の記憶を残すように


私だけでは
きみは
満足しない人だからだ

数多くの手に救いを求め
きみの記憶を残したがる

それが
きみという人だからだ


きみという人は
ひとりの人だけではだめなのだ

きみ自身が
それすらも気がつかない

いつだって
誰ぞの記憶の中にすら
一点の記憶を残したがる


数多くの手に救いを求めて
数多くの記憶の中に
残したがる
きみという人は



それらが私をひどく
傷つけていたことすら
きみは知らない

そうして そのきみの全てが
私を深く傷つけていた

この体すらも
粒子のごとく
風になってしまったことすら
なにも気がつかず

そんな きみが
いつまでも凍える風を
私に吹き付けていたことを
なにも知らないままでいる



いくら私が言おうとも
きみは気がつかない人だからだ


だからこそ
私は残したくはないと願った
きみとは違うことを選んだ


全ての記憶すらも
全てのものを
誰のもとにも
きみのもとにも残さない


私は
きみの
それで深く傷ついたのだから

きみと同じことはすまいと
冷たさ含む風を心に写し込んだ




きみとは違うのだ私は
きみとは違うことを選んだのだ
わざわざ選んだのだ



さようなら は
簡単に



私は全てを拾い集めて
まだ浅い春の川の中へ
解けてしまい
忘れ去られてゆくように

拾い集めてもらおう



私はいくだろう



全てのものが浅い春の日に



そうして早春の風だけが
澄んだ川の水と共に
かすかな音を立てて流るる頃
なにもなかったような
忘れ去られてゆくように



私はいくだろう



つなぎとめられた
誰ぞの記憶に
きみは かすかな救いを求める

そのきみが
私はきらいだった



記憶に残されれば
他の誰ぞのものでもよいと

かすかな救いを求める
きみが


私にはあわないのだ



交わることのないものは
冷たさ含む早春の風の中
記憶すらも
澄んだ川の中に
拾い集めてもらい
全ての記憶すらも残さぬよう


私はいくだろう




全てのものが浅い春の日に



つなぎとめられた
誰ぞの記憶に
かすかな救いを求める
きみが

私はきらいだった

私とはあわないのだ


つなぎとめられた
誰ぞの記憶に残されれば
それでいいと願い
ただ救いを求められれば
きみは
それで良かっただけなのだ


それが
私を傷つけていたことすら
きみは知らず


だから
私は

全てのものが浅い春の日に
私はいくだろう



残されぬように
雪解け水が流れ
全てを拾い集めてもらい
澄んだ川の中へ
解けてしまい消えるようにと



さようなら は
簡単に



つなぎとめられた
誰ぞの記憶に
かすかな救いを求めた
きみは

誰ぞの記憶に残されれば
それでいいと
その手を差し出し
かすかな救いを求めた



それらの全てが
私を傷つけていたことすら
きみは知らずに


きみは
それらが私を
ひどく傷つけていたことすら
なにも知らず
なにも気がつかず
全てが終わる


全てはまだ浅い春の風の中に
捨て去り
残さずにいこう



まだ浅い春の日に
全てが終わり



雪解け水は流るる



さようなら は
簡単に



全てのものが浅い春の日に
冷たさ含む早春の風を受け
澄んだ川の水源の音は
私の身を
送り出すように


私はいくだろう


さようなら は
簡単に


冷たき水の流れすらも
私の身を送り出して
くれるだろう


私は
全てを忘れ去り
全ての記憶すら誰にも残さず
全てを誰にも残さず

冷たさ含む早春の風と共に
いくだろう



流るる水は冷たき
まだ浅い春の日に













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by kazeumi-jun | 2017-02-11 14:26 | | Trackback




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【 まだ浅い春の日に …… ② 】



全てのものが浅い春の日に

山里では雪が残り
かすかな雪解け水が
澄んだ川に注がれる頃



どこにでもあるような
草花が出始める頃
雪解け水が流れ
音は水源から流れ

風は冷たさ含む
まだ浅い春の日に……



全てのものが浅い春の日に



早春賦の
風が吹く中



全てを終わり
冷たさ含む早春の風と共に
私はいくだろう



さようなら は
簡単に



かすかな雪解け水が流れ
冷たさ含む早春の風が
全てのものを消し去り



やがて閉ざされたものすらも
雪解け水は拾い集めて
ゆくだろう

雪解け水は流るる



雪解け水が流れ込み
川の水源は
まだ浅い春の日をゆく

冷たさ含む早春の風は吹き
閉ざされたものすらも
拾い集めて

忘れ去るように
水流は
かすかな音を立てて
流れていくだろう



私はそれらの中を
まだ浅い春の風と共に
流れていくだろう



さようなら は
簡単に



雪解け水は全てを拾い集めて
まだ浅い春の川の中へと
流していくだろう



いとも簡単に


私はそれらの中で



全てのものが浅い春の日に
私はいくだろう



桜の花のような
華やかさは
私には似合わぬ

まだ浅い春の日に咲く
どこにでもある草花の
それらが咲く頃に



さようなら は
簡単に



全てのものが浅い春の日に
私はいくだろう











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by kazeumi-jun | 2017-02-11 07:07 | | Trackback




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【 まだ浅い春の日に…… ① 】



まだ浅い春の日に
そんな早春の風吹く中で
全てが終わり
ひとり どこぞへと
風と共に流るるのも
よかろう


桜の花が
はらはらと散りゆる中など
私には ふさわしくない
ふさわしくないのだ


まだ浅い春の日に………


まだ浅い春の日の
日差しやわらかな中に
澄んだ水は流れ
送り出す声すら
流れていくだろう

流れていくだろう


さようなら は
簡単に



まだ浅い春の日の
草花が出始めた頃

私はいくだろう



全てのものが浅い春の風の中
澄んだ水は流れ
私を送り出す声すら
流れていくだろう




まだ浅い春の日に………











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by kazeumi-jun | 2017-02-11 04:26 | | Trackback

詩【 深海の砂 ② 】



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詩【 深海の砂 ② 】



何故そこは海に変わったのか
誰もが不思議がり問うだろう

それらを知るのは
蓄積されたはずの
漂い流れる砂に聞くがよいだろう

無言で漂い続ける砂の粒子に

けれども
忘れ去られた砂の粒子とて
答えられるはずはなかろうが

流れ出ることもなく
波のように
大きく揺らぐことすらなく
一滴一滴と押し出されてくる
新たな波の雫が
古びたものを巻き込むから

そのつどに
古びた記憶の粒子砂は目覚めて
再び新たな雫を生み出してゆく

そのつどに
水面の遥か上のほうで
突き刺さる滴りがある

それらが原因と知るならば
眠りについている粒子砂を
起こすなかれ

波の水面を乱すものよ
波の雫が落ちる様を見たとて
その乱すものは
所詮すぐに通り過ぎていく者ぞ

その水面上で
わかるはずはなかろうが

君らの持つ
その突き刺さる刃【 やいば 】を
水面上に置くなかれ
波をもてあそぶだけの者なら
眠りにつく滴りの
行き先を聞かぬことだ

長い歳月ずっと
深海は生み出されてきたと
密かに知るならば
ただ水面を乱すだけの者よ
密かに立ち去るがよい
眠りの邪魔をしているだけと
知らぬばかりなのだ

ひたすら
無言で漂い続ける砂の粒子に
深海の波は揺らぎ続ける

そうして ひたすら
無言で漂い続け砂の粒子は眠る
漂い続けて眠り続ける











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by kazeumi-jun | 2017-02-04 08:38 | | Trackback

詩【 深海の砂 ① 】



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詩【 深海の砂 ① 】



この体内の
心という場所に深海はある

流れ出るはずだった波の雫は
長い歳月ずっと
外に流れ出ることもなく
深海となる

深海に蓄積された記憶の砂は
化石になることもなく
さりとて
深海の砂にもなれず
記憶の砂は
深い海となった場所で漂うのである

新たな記憶の砂となって
押し出されてきた粒子は
古びた記憶の砂を巻き込んで
流れることもなく
深い海の底で
ひたすら漂うのである

化石にもなれず
さりとて深海の砂にもなれずに
流れることもない深海で
ひたすら漂い揺らぎながら

新たな記憶の砂を
また 巻き込みながら
この深海で











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by kazeumi-jun | 2017-02-03 09:58 | | Trackback



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物語詩【 異国からの波 】

【 作者/風岬《 かぜみさき 》】



異国からの波が打ち寄せる時、そこにあるのは捻れた時の流れであるような、不思議さゆえに生む異次元のような波色だろうか。

それとも、澄んだ波が白い泡を抱き寄せて戻り来る浜辺の、懐かしい彩りだろうか。

それらを知るのは、遥かなる異国からの波が流れ流れて打ち寄せる、静かな浜辺だけが知るのだろう。

それを知りながら女性は佇む。
こうして砂浜に佇み波を彷徨うごとく、遠い波を眺める時の切なさは何と語ればよいのだろうか。

その人は足元に流れる波の、さらに向こう側から打ち寄せる、あの重なり合う異国からの波を見て何を想い佇むのだろう。

異国からの波が打ち寄せる時……。

そのとき異国の波の中から流れ来るのは、捻れたような時の流れではなくて、真っ直ぐに向かい来る澄んだ波が、白い泡を抱き寄せて流れる懐かしい彩りの行方かもしれない。

その瞬間、女性は何を想い何を語るのだろう。
懐かしさと切なさが入り混じる中で、かすかな想いを馳せて。
波は無言さの中で打ち寄せる。

誰を想いつつ眺めているのだろう。
それは異国からの波だけが知る。
異国からの波が打ち寄せる時。











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by kazeumi-jun | 2017-02-03 09:13 | | Trackback